COLUMN/INTERVIEW

【連載】ジャズ百貨店 名盤BEST 20 第3回:ジョン・コルトレーン『至上の愛』

2016年の発売スタート以来、シリーズ累計出荷が75万枚を超えるユニバーサル・ジャズの定番シリーズ「ジャズ百貨店」。10月・11月に新たなラインナップ100タイトルが登場するのに先駆けて、これまでに発売された全510タイトルの中から“いま”最も売れている20枚をピックアップし、個性豊かな執筆陣が紹介します。



文:大塚広子

本作は、1964年12月9日午後8時から深夜にかけて、ルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで録音された。1961年末より共に奔走してきた4人(コルトレーン、ドラマーのエルヴィン・ジョーンズ、ピアニストのマッコイ・タイナー、ベーシストのジミー・ギャリソン)の技術や意識が結実した演奏であり、リーダーの非凡な創造性が頂点に達した瞬間の傑作と言われて久しい。

「雨が降ってほしいと思ったら、すぐに雨が降ってくるための方法を見出したい。友人が病気になったら、私が何かの曲を演奏すればその病気が治るようにしたい。音楽の真実の力をまだ人は誰も知らない。それをコントロールできるようになることが、あらゆるミュージシャンの目標だと信じている」(アシュリー・カーン著『至上の愛の真実』より)との言葉から受け取れる彼の非凡な精神性は、本作に〈聖痕(stigma)〉として現れた。そして、4部作の組曲、自筆のライナーノーツと神への賛歌の詩(パート4と照応)を加えたフォームは当時のジャズ・シーンにおいても異色なものだった。



 この神業、今では形を変えユニヴァーサルな魅力を備えたものになっている。本作を聴くことで、彼の精神は世界中のさまざまな分野のアーティストにインスピレーションを与える。全体を掌握する4音のモチーフは、口ずさめるほど印象的で、プリミティヴなリズムと呼応し、サックスの奏法もその後に影響を与えたアーティストたちのエネルギッシュなスタイルや、〈シーツ・オブ・サウンド〉に倣ったテクニカルな演奏を体験している現在の音楽ファンに親近感を与えるものだ。風変わりだった組曲構成は、シームレスに曲が繋がったミックステープとして、自筆ライナーや歌詞への関与は、今やミュージシャン本人が手がけるプロダクションとも繋がっている。こういった側面から、本作は身近な存在であり、極めてパーソナルな体験を基にしながらも多様な変化を許容する普遍性を持ち続ける。


【リリース情報】
ジョン・コルトレーン『至上の愛』

UCCU-5606
https://store.universal-music.co.jp/product/uccu5606/

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