COLUMN/INTERVIEW

サックス奏者ベニー・モウピンが、リー・モーガンとの思い出、そして『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』を語る。




わずか33歳で命を落とした天才トランペット奏者のリー・モーガンが、晩年の1970年に発表したライヴ名盤『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』が、50年の時を経て遂にコンプリート化され、8月20日にリリースされる。

『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』は、リーが亡くなる1年半前の1970年7月に、サックスのベニー・モウピン、ピアノのハロルド・メイバーン、ベースのジミー・メリット、ドラムのミッキー・ローカーで構成するレギュラー・クインテットで、カリフォルニア州ハモサ・ビーチのジャズ・クラブ「ザ・ライトハウス」に出演した際のステージを収録したもの。

1970年発表のオリジナル版は2枚組LPで、1996年には追加曲を収録した3枚組CDでリリースされたが、今回さらに4時間以上の未発表音源(21トラック)が加わり、遂に1970年7月10日~12日の3日間のステージの全貌が明らかとなる。

ボックスに付属のブックレットには、録音時に現地で撮影された未発表写真に加え、当時のバンド・メンバーへの貴重なインタビューや、リーを敬愛するトランペット奏者たちのコメントが掲載される(日本盤は日本語訳付)。ここでは、再発プロデューサーのゼヴ・フェルドマンによるサックス奏者ベニー・モウピンのインタビューを抜粋して特別公開する。



ゼヴ・フェルドマン(ZF):どのようにしてリー・モーガンと初めて出会ったのですか?

ベニー・モウピン(BM):若いころ、デトロイトでのことだった。彼の演奏を初めて聴いたとき、それが彼との出会いだと思う。そのころ、彼はアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズで演奏していた。そこで、ライヴ・バンドが演奏している素晴らしい音楽を聴いたことが、私にとって転機になった。

ZF:第一印象はどうでしたか?

BM:彼はとてもダイナミックだった。トランペットを思いのままに操っていた。そして彼は、当時の連中のように、じつに着こなしが良かった。つまりTシャツにジーンズというような格好じゃなかった。彼はとても体調が良いように見えた。

私は1962年にニューヨークに引っ越した。いつも出歩いて、目にとまったライヴを片っぱしから聴いていたが、リー・モーガンを観たり聴いたりしたことはまったくなかった。だから、それは彼がニューヨークに姿を現さなくなった時期ということになる。その後もずっとそんな状態が続き、1968年になってようやく彼を見かけるようになった。

私はホレス・シルヴァーのバンドで、ブロードウェイを上ったところにあるリン・オリヴァーズという店でリハーサルをしていた。ヨーロッパ・ツアーに出かけるための準備をしていたんだ。ドアが開いてリー・モーガンが入ってきた。彼は清潔で元気そうだった。最初に彼はホレスに謝った。とても礼儀正しかった。「リハーサルを邪魔して申し訳ない。あなたのバンドのサックス奏者と話がしたいんだ」と彼は言った。そして、真っ直ぐ私のところに来て「もうすぐレコーディングをやるんだ。俺と一緒にやらないか?」と訊いてきた。私は彼を見て「もちろん」と答えた。彼は「オーケー、サンキュー。いずれ誰かに電話させるよ」と言って歩き去った。それだけだった。それが私たちの本当の出会いになった。私たちが一緒にやったレコーディングは『キャランバ!』というタイトルで発売された。並外れたアルバムだった。

それがきっかけとなり、いくつかのセッションで彼と共演した。私たちはお互いに好感を抱いた。波長が合ったんだ。彼と一緒にいると、いつも楽しかった。彼が当時やっていたことは私よりはるかに先を行っていた。

ホレスは1年間ほどバンドを維持した。『セレナーデ・トゥ・ア・ソウル・シスター』を録音したあと、すべてが終わった。そしてある日、リーから電話があった。彼は「もうすぐジョージ・コールマンが俺のバンドから脱けるんだが、彼に代わってバンドに入る気があるかどうか、知りたいんだ」と言った。それがライトハウスでのレコーディングに行き着くことになるバンドの始まりだった。

私たちはリハーサルを始めた。リーから、何か曲を持っていないか、と訊かれた。私はたまたま自分の曲のひとつを持参していた。〈ペヨーテ〉か〈ユンジャナ〉だったと思う。彼は「いいな、これをやろう」と言った。私たちはその曲を演奏した。終わるとすぐに彼は「いい曲だな。もっと他にないかい?」と言った。

そこで私は次のとき、さらに2、3曲を持参した。こうして、リハーサルをするたびに私は何かを持っていった。私たちはそれを練習した。「これも気に入ったよ。他にはどんな曲があるんだい?」。そんな調子だった。というわけで、私たちはウマが合った。私たちはイースト・コーストでたくさんライヴをやった。もちろん、スラッグスにも出演した。デトロイトに行ったし、ワシントンD.C.でも演奏した。サンフランシスコに着くころには、私たちはすっかり意気投合していた。私が共演したすべてのプレイヤーの中で、一緒に過ごした時間がいちばん多かったのはリー・モーガンだ。



ZF:ライトハウスについてはどんなことを憶えていますか?

BM:そうだな。第一に、それは太平洋に面していた。私たちが泊まったのはシー・スプライトというホテルだった。いまも営業しているよ。毎日が気持ちのいい日だった。海に面していたから、海岸に歩いて下りることができた。そよ風が心地よかった。

リーと一緒にいると最高だった。私たちは毎日、練習していた。彼の部屋はホテルの廊下の一方の側で、私の部屋はもう一方の側だった。ときどき、私が部屋のドアを開けると、彼が練習しているのが聞こえた。きっとホテルにいる全員に聞こえていたと思う。みんながそれを聞いて喜んでいたかどうかは分からない。だが私は彼が訓練のためトランペットを吹いているのを聴くと心が弾んだ。彼はアンブシュアを維持するため、リップ・スラー、スケール、ロング・トーンなど、あらゆる種類の基礎練習をやっていた。

彼はとても若いころにミュージシャンとしてスタートした。彼は自分が出会った偉大な人々からじつに多くのことを吸収したから、人生の後期になるまでアンブシュアについて悩むことはなかったと思う。私たちが共演し始めたとき、彼は喧嘩のせいで問題を抱えていた。かなり深刻な状態だった。だけど彼は強い精神力をもっていた。彼は苦闘の末、演奏能力を取り戻した。このレコーディングは彼がいかに完璧に回復したかを明白に示している。彼は毎日練習していたし、毎晩本当に力強く演奏していた。彼はとても高い職業倫理をもっていた。

リーは子供たちを愛していた。サンフランシスコに行ったときに彼が紹介してくれた友人たちの何人かには子供がいた。ある日、私たちはゴールデン・ゲート・パークの植物園に出かけた。子供たちが走り回り、楽しそうに遊んでいた。すると突然、リーは子供たちと一緒に走り始めた。まるで子供に戻ったようだった。彼が子供たちと遊んでいた光景は、私の頭に残っている大好きな記憶のひとつだよ。



ZF;このレコーディングを聴くと、聴衆が演奏を心から楽しんでいるのが分かります。彼らから送られてくるエネルギーを感じていましたか?

BM:ああ、強く感じていたよ。なにしろ店は毎晩、客で満杯だったからね。聴衆であふれ返っている場所で演奏すると、いつも正真正銘のエネルギーを感じる。人々の感謝の思いを感じるし、すべてをさらけ出したいという気持ちになる。リーには数多くのファンがいた。

ZF:あなた方が3日間にわたって毎晩4セット演奏していたのは驚きです。エネルギーが高まったり弱まったりすることはなかったのですか?

BM:私たちはレコーディングに備えて充分に準備していた。だから4セット演奏するのは、それほど大したことではなかった。私たちにはやる気があったし、目的があったからね。とはいえ、第4セットが終わるころには、かなりクタクタになっていた。それでも、翌日まで充分に体を休め、運動したり、何でも好きなことをやれば、次の日の夜のための準備は万全になった。
 


ZF:私が心を打たれるのは、あなた方の固い結束力です。その仲間意識について、もっと知りたいのですが。

BM:そうだな。私たちはメンバーが出たり入ったりすることを避けていた。パーソネルを変えると波長も変わってしまう。私たちは最初からお互いの心と心のつながりを深めようとした。それが私たちの音楽に反映されていたと思う。それは瞬間の中にいるということであり、瞬間をとらえるということだ。私たちはそうやっていた。毎晩、そんな心構えで演奏していたよ。

ZF:ライトハウスでのリー・モーガンとの共演について、何か付け加えておきたいことはありますか?

BM:あれは親友と過ごした極上な時間のひとつだったと思う。私は心置きなく自分の音楽を前面に打ち出すことができた。私に言わせれば、お互いに抱く敬愛の念という点で最高の雰囲気に包まれていた。そんな雰囲気はめったに生まれない。ライトハウスでの演奏を私はけっして忘れないだろう。



■リリース情報

リー・モーガン 『コンプリート・ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』
2021年8月20日発売
UHQCD 8枚組:UCCQ-9583/90 \13,200 (tax in)
ご購入はこちら https://store.universal-music.co.jp/product/uccq9583

Disc 1
1970年7月10日(金)
Set 1
1. イントロダクション・バイ・リー・モーガン
2. ザ・ビーハイヴ*
3. イントロダクション
4. サムシング・ライク・ジス
5. ユンジャナ*
6. スピードボール*

Disc 2
1970年7月10日(金)
Set 2
1. アイ・リメンバー・ブリット*
2. イントロダクション*
3. アブソリューションズ*
4. スピードボール*

Disc 3
1970年7月10日(金)
Set 3
1. イントロダクション*
2. ネオフィリア*
3. イントロダクション
4. 416イースト10thストリート
5. ザ・サイドワインダー
6. スピードボール*

Disc 4
1970年7月10日(金)
Set 4
1. イントロダクション*
2. ペヨーテ*
3. スピードボール
1970年7月11日(土)
Set 1
4. エーオン
5. イントロダクション*
6. ユンジャナ*

Disc 5
1970年7月11日(土)
Set 2
1. イントロダクション*
2. サムシング・ライク・ジス*
3. イントロダクション
4. アイ・リメンバー・ブリット
5. イントロダクション*
6. ザ・ビーハイヴ*
7. スピードボール*

Disc 6
1970年7月11日(土)
Set 3
1. ネオフィリア*
2. ノンモ
Set 4
3. ペヨーテ*
4. アブソリューションズ

Disc 7
1970年7月12日(日)
Set 1
1. イントロダクション*
2. サムシング・ライク・ジス*
3. イントロダクション
4. ユンジャナ
Set 2
5. アイ・リメンバー・ブリット*
6. アブソリューションズ*
7. スピードボール*

Disc 8
1970年7月12日(日)
Set 3
1. イントロダクション
2. ネオフィリア
3. イントロダクション
4. ザ・ビーハイヴ
5. スピードボール*
Set 4
6. ペヨーテ
7. ノンモ*

*未発表

<パーソネル>
リー・モーガン(tp)
ベニー・モウピン(ts, fl, bcl)
ハロルド・メイバーン(p)
ジミー・メリット(Ampeg b)
ミッキー・ローカー(ds)
ゲスト:ジャック・ディジョネット(ds)
★1970年7月10日~12日、
カリフォルニア州ハモサ・ビーチ、ザ・ライトハウスにてライヴ録音

ユニバーサルミュージック リー・モーガン サイト
https://www.universal-music.co.jp/lee-morgan/