COLUMN/INTERVIEW

【連載】Sampling BLUE NOTE 第11回 Gene Harris And His Three Sounds / Book Of Slim


“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


【第11回】
Gene Harris And His Three Sounds / Book Of Slim
ジーン・ハリス&ザ・スリー・サウンズ / ブック・オブ・スリム
AL『エレガント・ソウル』収録




◆サンプリング例
Guru feat. Roy Ayers / Take A Look (At Yourself)


ジャズとヒップホップの結びつきを語る上でグールーの『Jazzmatazz Volume: 1』(1993年)は外せないアルバムだ。ラッパーのグールーことキース・エドワード・エラムは、1985年にDJプレミアとギャング・スターを結成して一躍スターダムを駆け上がった。ジャズ・ネタを多くサンプリングした作風で知られ、ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズのようなアシッド・ジャズのアーティストとも共演する彼らだが、そうしたジャズに対する愛情やシンパシーがグールーのソロ活動でも花開く。4枚のアルバムが制作されたジャズマタズは彼を代表するプロジェクトで、その第1弾はジャズ・ヒップホップやアシッド・ジャズが盛り上がる最中に発表された。ジャズ界からはグールーと同年代のブランフォード・マルサリス、コートニー・パイン、ロニー・ジョーダンたちがラインナップに名を連ね、アシッド・ジャズ方面ではザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズからエンディア・ダヴェンポート、ヤング・ディサイプルズからカーリーン・アンダーソンなども参加する豪華なプロジェクトだ。

そんな中で何と言っても話題を集めたのは、ドナルド・バード、ロイ・エアーズ、ロニー・リストン・スミスといったヴェテラン勢の参加だった。彼らレジェンドたちはグールーが影響を受け、サンプリングという形でリスペクトしてきたアーティストだ。サンプリングは決して曲を盗む行為ではなく、尊敬の気持ちから引用するということであり、彼らのゲスト参加はそうした行為に応えてのものだったことを示している。それ以前はサンプリングに対して否定的なミュージシャンも多かったのだが、ジャズマタズ以降はそうした認識にも変化が訪れ、ヒップホップのアーティストとジャズ・ミュージシャンのコラボもいろいろ行われるようになっていく。この『Jazzmatazz Volume: 1』収録の「Take A Look (At Yourself)」はロイ・エアーズのヴィブラフォンをフィーチャーした楽曲。MCだけでなくトラックメイカーとしての才も見せるグールーだが、ここではジーン・ハリスとザ・スリー・サウンズによる「Book Of Slim」と、メルヴィン・ブリスの「Synthetic Substitution」という2つの楽曲をサンプリングして曲を作っている。

ブルースやゴスペルを取り入れたスタイルで知られるピアニストのジーン・ハリスは、ベーシストのアンディ・シンプキンスとドラマーのビル・ダウディと組んだザ・スリー・サウンズとして、<ブルーノート>に数々のアルバムを残している。ソウルフルでグルーヴィーな演奏は、レイ・チャールズやラムゼイ・ルイス・トリオなどと並んで人気を博した。そうしたソウルフルな持ち味がもっともよく出たアルバムが『Elegant Soul』(1968年)で、それをアレンジするのがサックス/オルガン奏者として自身でもいろいろアルバムをリリースするモンク・ヒギンズ。彼の楽曲もヒップホップのアーティストの間でサンプリング・ソースとして愛されている。「Book Of Slim」についてはタイトなリズム・セクションとストリングスのコンビネーションが絶妙で、アーシーさを残しながらも都会的なセンスの良さを感じさせるアレンジとなっている。そして、「Take A Look (At Yourself)」においてはそこにロイ・エアーズのヴィブラフォンが絡み、魅惑のアーバン・グルーヴを生み出している。

Gene Harris And His Three Sounds / Book Of Slim


Guru feat. Roy Ayers / Take A Look (At Yourself)



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