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【連載】Sampling BLUE NOTE 第7回 Grant Green / Ain’t It Funky Now


“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


【第7回】
Grant Green / Ain’t It Funky Now
グラント・グリーン / エイント・イット・ファンキー・ナウ
AL『グリーン・イン・ビューティフル』収録




◆サンプリング例
Mr Jukes feat. Charles Bradley / Grant Green
Moodymann / Technologystolemyvinyl


サンプリングは別の楽曲のフレーズを用いて新たな曲を作るという行為に始まっているが、そうした行為が浸透し、さまざまな技術進化も加わる中で、表面的な楽曲制作にとどまらず、たとえば原曲やその作者に対してのオマージュを捧げたり、その楽曲にまつわるストーリーを引用するなど、より多角化した行為を含むようになっている。その一例としてグラント・グリーンの「Ain’t It Funky Now」を取り上げたい。

もともと「Ain’t It Funky Now」はジェイムズ・ブラウン(JB)の曲で、彼の絶頂期にあたる1969年にシングル・リリースされ、翌1970年に発表したアルバム『Ain’t It Funky』にも収録された。JBの曲はサンプリング・ソースの代名詞であるが、「今ファンキーじゃなくてどうするんだい」というJB流ファンク宣言のこの曲も、ビースティー・ボーイズ、DJカムからレッド・ホット・チリ・ペッパーズに至るさまざまなアーティストが用いている。そしていくつかカヴァーも生まれ、ジャズ系ではオルガン奏者のジミー・マクグリフが取り上げたほか、ギタリストのグラント・グリーンが『Green Is Beautiful』(1970年1月録音)でカヴァーしている。

Grant Green / Ain’t It Funky Now


この頃のグリーンはジャズ・ファンクに没入しており、前作の『Carryin’ On』(1969年10月録音)では同じくJBの「I Don't Want Nobody To Give Me Nothing (Open Up The Door I'll Get It Myself)」のほかにザ・ミーターズの「Ease Back」、次作の『Alive!』(1970年8月録音)ではクール・アンド・ザ・ギャングの「Let The Music Take Your Mind」やドン・コヴェイの「Sookie, Sookie」といった具合に、ファンク・ナンバーを数多く取り上げていた。「Ain’t It Funky Now」もこうした流れでカヴァーしたのだが、同時にグリーンがJBにとても入れあげていたことを物語る。この3作のアルバムのドラマーはアイドリス・ムハマッドだが、彼もまたJBの影響の強いミュージシャンで、自身のアルバム『Black Rhythm Revolution!』(1970年11月録音)でもJBの「Super Bad」をやっている。

グラント・グリーンはインストのジャズ・ファンクとして「Ain’t It Funky Now」を演奏したが、このヴァージョンはヒップホップではパブリック・エネミーやフリースタイル・フェローシップなどが、トリップホップではトリッキーがサンプリングし、近年でもミスター・ジュークスがチャールズ・ブラッドリーをフィーチャーしたその名も「Grant Green」で用いている。「Grant Green」はそのままグリーンへのオマージュを綴ったソウル/ファンク・ナンバーだが、ここで歌うチャールズ・ブラッドリーはJBを継承するようなシンガーで(アポロ・シアターでJBのステージを観て、この道を志した)、この曲が発表された2017年に他界している。このリリースはブラッドリーへの追悼でもあるのだ。

Mr Jukes feat. Charles Bradley / Grant Green


そして2007年にムーディーマンが、「Technologystolemyvinyl」というデトロイト・ハウスとジャズ・ファンクをミックスさせたような楽曲でも「Ain’t It Funky Now」を使っている。彼の場合はストレートなサンプリングではなく、楽曲を大幅にテンポ・アップさせた上でほかの演奏も取り入れるなどしているのだが、前年の2006年にJBが他界しており、そのオマージュも込めているのだろう。「技術は俺のレコードを盗む」というタイトルは、何だかサンプリングに対する示唆が込められているようでもある。

Moodymann / Technologystolemyvinyl

 
 

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