COLUMN/INTERVIEW

【連載】Sampling BLUE NOTE 第5回 Marlena Shaw / Woman Of The Ghetto


“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


【第5回】
Marlena Shaw / Woman Of The Ghetto
マリーナ・ショウ「ウーマン・オブ・ザ・ゲットー」
AL『ライヴ・アット・ザ・モントルー』収録




◆サンプリング例
St. German / Rose Rouge
Blue Boy / Remember Me


ジャズ・ネタのサンプリングは多くの場合ヒップホップで見られるのだが、例外としてマリーナ・ショウの「Woman Of The Ghetto」はそれ以外のジャンルでの使用例が有名だ。そもそもこの曲は<カデット>時代の『The Spice Of Life』(1969年)に初めて収録された。こちらの原曲ヴァージョンもサンプリングに用いられ、さらに「California Soul」という超有名サンプリング・ソースも収録している。しかし、「Woman Of The Ghetto」は『Live At The Montreux』(1974年)に収録されたライヴ・ヴァージョンのほうの人気が高い。1973年のモントルー・ジャズ・フェスティヴァルでのライヴの模様を収録したアルバムで、スティーヴィー・ワンダーの「You Are The Sunshine Of My Life」やマーヴィン・ゲイの「Save The Children」を歌うなど、ニュー・ソウルに接近していた時期の録音である。「Woman Of The Ghetto」に関してもジャズというよりソウルやゴスペル色が強く、ダニー・ハサウェイやカーティス・メイフィールドのライヴ・アルバムに通じる匂いを放っている。

Marlena Shaw / Woman Of The Ghetto



「Woman Of The Ghetto」の演奏はジョージ・ギャフニー、ハロルド・ジョーンズ、エド・ボイヤーのトリオによるジャズ・ファンク的なものだが、多くの曲でサンプリングされるのはイントロのマリーナ・ショウのアカペラ・パートである。その代表がサン・ジェルマンの「Rose Rouge」で、前述のとおりヒップホップでなくクラブ・ジャズやハウスに分類される作品である。サン・ジェルマンはフランスのエレクトロニック系DJ/プロデューサーのルドウィック・ナヴァールによるプロジェクトで、ハウスやジャズをクロスオーヴァーしたサウンドで人気を博した。「Rose Rouge」は2000年の『Tourist』に収録されているが、このアルバムは<ブルーノート>からのリリースで、つまり<ブルーノート>が公認したサンプリングとなる。ちなみに昨年リリースされた『Blue Note Re:imagined』は、基本的に1960~70年代の<ブルーノート>音源を現在のUKジャズ新世代がカヴァーするというコンセプトなのだが、例外的にジョルジャ・スミスが「Rose Rouge」を取り上げ、サン・ジェルマンを介してマリーナ・ショウの「Woman Of The Ghetto」に繋がる形を見せた。

St. German / Rose Rouge



そして、サン・ジェルマンが「Rose Rouge」を発表する前の1997年には、スコットランドのハウス系DJのブルー・ボーイが「Remember Me」で「Woman Of The Ghetto」をサンプリングしている。こちらはスカル・スナップスの「It’s A New Day」、クール&ザ・ギャングの「N.T.」という鉄板ネタと組み合わせたブレイクビーツ・ハウス~トリップ・ホップ的な作品で、「Rose Rouge」の誕生にもインスピレーションを与えたことだろう。

Blue Boy / Remember Me




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