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【連載】Sampling BLUE NOTE 第4回 Lonnie Smith / Spinning Wheel



“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


【第4回】
Lonnie Smith / Spinning Wheel
ロニー・スミス「スピニング・ホイール」
AL『ドライヴス』収録




◆サンプリング例
A Tribe Called Quest / Can I Kick It?
A Tribe Called Quest / Buggin Out
DJ Krush / Big City Lover


先ほど新作の『Breathe』を発表したばかりのロニー・スミス。ドクター(博士)の冠を配するこのオルガン・レジェンドも御年78歳。しかしながら気はまだ若く活力に満ち、『Breathe』ではなんとロック界のカリスマのイギー・ポップ(彼もまた74歳)と共演し、ティミー・トーマスの「Why Can’t We Live Together」やドノヴァンの「Sunshine Superman」をやっている。ジャズ・オルガン奏者ながらロックやR&B、ファンクの曲を好んで取り上げてきたのは昔からお馴染みで、1970年の『Drives』ではブラッド・スウェット&ティアーズの「Spinning Wheel」を演奏する(当時この曲は多くのジャズ・ミュージシャンが取り上げた定番人気曲だった)。荒々しいハモンド・オルガンのリフ、ジョー・デュークスによるドカドカとダイナミックなドラム・ビート、ロニー・キューバーによる極太のバリトン・サックスの咆哮が印象的なこのカヴァーは、60年代後半から70年代前半のロニー・スミス全盛時代を代表する1曲である。

Lonnie Smith / Spinning Wheel



ロニー・スミスの曲もいろいろとサンプリングされるが、「Spinning Wheel」はなんと120を超す作品で使われている。主なところではウータン・クラン、ビースティー・ボーイズ、ブラック・ムーン、ビートナッツ、ランDMC、ファット・ジョー、デ・ラ・ソウル、ショービズ&A.G.、スヌープ・ドッグなどが用い、1990年代前半の人気サンプリング・ソースだった。そうした中でア・トライブ・コールド・クエストの使用例がもっとも有名だ。よほどのお気に入りだったのだろう、1990年の「Can I Kick It?」(アルバム『People’s Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』収録)と1991年の「Buggin Out」(アルバム『Low End Theory』収録)と2度使っている(サンプリングしているパートはそれぞれ異なる)。特にルー・リードの「Walk On The Wild Side」、ドクター・バザーズ・オリジナル・サヴァンナ・バンドの「Sunshower」と交えながら使った「Can I Kick It?」は衝撃的で、1990年代のヒップホップ黄金時代の幕開けを告げる1曲として記憶される。

A Tribe Called Quest / Can I Kick It?



A Tribe Called Quest / Buggin Out



ほかにもトミー・ゲレロやナイトメアズ・オン・ワックスなど、ヒップホップにとどまらない幅広いアーティストに使われる「Spinning Wheel」だが、日本でもDJクラッシュがデビュー・アルバムの「Big City Lover」(1994年)で用いた。マイルス・デイヴィスの「Stuff」のほかに、ルー・ドナルドソンの「Ode To Billie Joe」に「Spinning Wheel」と<ブルーノート>音源2曲を用いた作品となっている。「Big City Lover」はソニア・ヴァレットのヴォーカルをフィーチャーしたR&B的なナンバーで、当時はアシッド・ジャズ方面でも人気を博したのだった。

DJ Krush / Big City Lover




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