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【連載】Sampling BLUE NOTE 第3回 Ronnie Foster / Mystic Brew



“史上最強のジャズ・レーベル”と称されるブルーノート。その一方で、“最もサンプリングされてきたジャズ・レーベル”と言っても過言ではない。特に1970年代のBNLA期に発表されたソウルフルかつファンキーな作品は、1980年代以降ヒップホップやR&Bのアーティストによって数多くサンプリングされた。このコラムは、ジャズだけでなくクラブ・ミュージックにも造詣の深いライターの小川充が、特に有名な20曲を厳選し、その曲の魅力やサンプリングされて生まれた主要トラックを解説する連載企画(隔週更新)。

文:小川 充


【第3回】
Ronnie Foster / Mystic Brew
ロニー・フォスター「ミスティック・ブリュー」
AL『トゥー・ヘッディド・フリープ』収録




◆サンプリング例
A Tribe Called Quest / Electric Relaxation
J. Cole feat. Kendrick Lamar / Forbidden Fruit
Madlib / Mystic Bounce


<ブルーノート>のサンプリング・ソースについて尋ねられ、ヒップホップ・ファンなら真っ先に思い浮かべるのがロニー・フォスターの「Mystic Brew」ではないだろうか。サンプリング・ソースの辞書的サイトのWhosampled.comでは、「Mystic Brew」の使用例は30曲ほど紹介されている。その中の人気曲にはJ・コールがケンドリック・ラマーをフィーチャーした「Forbidden Fruit」(2013年)、マッドリブによる「Mystic Bounce」(2003年)などが並ぶ。ちなみに「Mystic Bounce」は<ブルーノート>からリリースされた『Shades Of Blue』の収録曲で、このアルバムはマッドリブが1970年代の<ブルーノート>音源をリミックスしたものだ。

そうした中で一番人気はア・トライヴ・コールド・クエスト(ATCQ)の「Electric Relaxation」(1993年)である。1989年にデビューしたATCQは活動当初からジャズを積極的にサンプリングしており、キャノンボール・アダレイ、ロイ・エアーズなどのネタを使って曲を作ってきた。セカンド・アルバムの『The Low End Theory』(1991年)ではロン・カーターをゲストにフィーチャーし、ジャズに対する理解や愛情もヒップホップ・アーティストの中では随一である。「Electric Relaxation」は3枚目のアルバムの『Midnight Marauders』に収録されており、彼らの人気が頂点に達した頃の作品。ウェルドン・アーヴィン・ネタの「Award Tour」と共に、アルバムを代表する楽曲だ。この曲によって元ネタの「Mystic Brew」を知ったヒップホップDJは数知れず、その後のサンプリング・スタイルの指針にもなっていった。J・コールにしてもマッドリブにしても、「Electric Relaxation」というお手本があったからこそ「Mystic Brew」をサンプリングしたのである。

「Mystic Brew」はロニー・フォスターのデビュー・アルバムの『Two-Headed Freap』(1972年)に収録される。後にエレピやアコースティック・ピアノ、シンセも演奏するフォスターだが、当初はオルガン奏者だった。1960年代の主流のハモンド・オルガンによるソウル・ジャズから脱却し、1970年代前半のエレクトリック・ジャズやジャズ・ファンクの流れに乗り、その後のクロスオーヴァーやフュージョンの時代を切り開いていくひとりとなった。『Two-Headed Freap』のプロデュースはジョージ・バトラー、アレンジャーはウェイド・マーカスで、モダン・ジャズのみならずソウルやファンクなど多方面にも鼻が利く人たち。1970年代における新しい<ブルーノート>を牽引する面々が集まったレコードなのである。ちなみに、原盤はATCQのサンプリングのおかげで一気に中古盤店の人気レコードになってしまった。

Ronnie Foster / Mystic Brew



A Tribe Called Quest / Electric Relaxation



J. Cole feat. Kendrick Lamar / Forbidden Fruit



Madlib / Mystic Bounce





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