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ゆっくり、だけど、確実に。 〜福盛進也 音楽半生記〜 (第23回)



2019年に創立50周年を迎えたドイツの名門ECMレーベル。そのECMから昨年デビューを飾った日本人ドラマーの福盛進也。
15歳でドラムを始め、17歳の時に単身で渡米。その後、ブルックヘブン・カレッジ、テキサス大学アーリントン校を経て、バークリー音楽大学を卒業。10年間のアメリカでの活動後、2013年に拠点をミュンヘンに移し欧州各国で研鑽を積み、遂に念願のECMデビューを飾った福盛進也が、これまでの歩みを自ら綴る連載企画。


【第二十三章】―Dunn Brothers―

徐々にビッグバンドの演奏にも慣れ始め、スモールコンボやヴォーカル・ジャズのアンサンブルではスタンダード曲をたくさん学び、レパートリーが増えてきた。即興音楽という中で、どうやって音で会話し作り上げていくか、曖昧だったことがどんどんとハッキリとしてくる。時間を見つけては、学校で他の生徒とセッションをしてみたり、仲の良いベーシストとグルーブの研究をしたり、日に日にジャズを演奏する楽しさが増していった。そして学校でも自分の演奏力が評価され、2004年の秋セメスターからの1年間9教科分の学費が免除されるJazz Scholarshipという賞をもらったりもした。

その頃、僕よりも何年か先輩だったギタリストのJason、ベーシストのYoung、ドラマーのDarioの3人が学校からすぐ近くにあるDunn Brothers Coffeeというカフェで毎週月曜日に演奏しているということを教えてもらった。その3人は僕たちよりも一つ前の代のヴォーカル・ジャズ・アンサンブルのリズム・セクションで、いつも一緒に演奏をしているのを観てとてもかっこよく思えたし憧れていた。たまにそのアンサンブルにコンガで参加し、NashvilleやNew Orleansなどのジャズ・フェスティヴァルに一緒に参加したのも良い思い出だ。学生ということで貧乏だったけど、チップ制で、生でジャズの演奏を間近で観られるというのはとても有難いことで、それから毎週そこへ顔を出しに行くようになった。知っているスタンダードが流れると頭の中でコード進行を追い、ドラム・ソロになると拍を数えどんなアプローチをしているかじっくり観させてもらった。何度か顔を出しているうちに、リーダーのJasonから「Shinyaも一曲叩くか?」と言われシットインさせてもらう流れに。ずっと観ながら自分も叩いてみたい気持ちがあったので、そのオファーはとても嬉しかった。何の曲を演奏したかもう忘れてしまったけれども、校外のカフェで演奏するのは初めてだったし、学生ではなくプロのミュージシャンとして見られるのだろうから、とても緊張したんだと思う。それから先も何度もシットインさせてもらったが、名前を呼ばれる度に心臓がバクバクしたことをよく覚えている。


Dunn BrothersにてYoungと

秋になると、そろそろ自分の楽器が欲しくなってきて遂にドラム・セットを購入した! シンバル類は少し前に揃えてはいたのだが、肝心の太鼓類はまだ持っていなかったのだ。僕はだいたいのことは形から入るタイプなので、どこかで耳にした「ジャズといえばGretschだ」という言葉を信じ切って、実際に試奏することも無く自分の勘だけを頼りにGretschのセットを買うと決めていた。そして、その後何度もお世話になるLone Star Percussionというお店に出向き、カタログを見ながら自分の欲しいドラム・セットとスネアを注文した。完全受注生産のモデルだったので、それから半年ほど経ち、2005年に入ってからようやく手元にそのセットが届いたのだ。それはそれはもう嬉しくて、音も出せないのに自宅でそのセットを組み立て、一晩中眺めていた。

そしてそれを機に、Darioの都合が悪い時にJasonから連絡があり、Dunn Brothersで一緒に演奏してくれないか、と頼まれるようになった。ご自慢のドラム・セットを持ち運び、微々たるギャラでしかないが、プロとしての初めての仕事に舞い上がった。そうして度々演奏しているうちに、Darioがドラムの世界を諦め違う道に進むことになり、僕がレギュラー・メンバーとして毎週演奏するようになった。元々ドラマーよりもパーカッショニスト志向であったし、演奏するよりも裏方でエンジニアとかもしたいという理由だった。その後、僕はテキサスを後にする少し前まで、Jasonのギター・トリオで毎週Dunn Brothersに出演していた。そこで学んだ膨大な量の楽曲は今や自分の糧となっているし、カフェということもあり、小音量で演奏する技も身につけないといけなかったことは(当時は音量を出せないことにかなり不服に思っていたのだが)現在にも活きているのだろうと思う。

そして、その頃から、少しずつ自分の実力と学校のレベルが合わなくなってきたことから、学校に対する不満や不信感を持つようになってきた。

※記事中の写真は本人提供

(次回更新は1月20日の予定です)



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