COLUMN/INTERVIEW

独占インタビュー:大盛況の初来日公演。“声を演奏するミュージシャン”と自身を紹介するジャズメイア・ホーン

インタビュー/テキスト:原田和典

2017年にデビュー・アルバム『A Social Call』で、久々に正統派の女性ジャズ・ヴォーカリストの登場と大注目され、”最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム”にノミネートされた第60回グラミー賞のパフォーマンスも圧倒的だったジャズメイア・ホーン。9月4日に自作のオリジナルを中心に構成されたセカンド・アルバム『ラヴ・アンド・リベレーション』で日本デビューを果たし、12月5日から7日にかけてコットンクラブで初来日公演を開催。ステージ毎に演奏する曲もスタイルを変えながらも、自分の力を信じ、音楽で精いっぱい自身を表現する28歳の小柄な女性は、人々にも愛と解放を共有する大きな存在だ。


写真提供/COTTON CLUB
撮影/ Tsuneo Koga


――初の日本公演、その1日目を終えた感想をいただけますか?  (このインタビューは「コットンクラブ」初日公演の翌日昼に行なわれた)

ジャズメイア (以下JM): 心から楽しんで歌うことができました。でも、始まる前はとてもナーヴァスだったんです。初めて日本で公演するということもありましたし、東京出身のピアニスト(海野雅威氏)が私以上にナーヴァスになっていたので。でも舞台に出て、音楽が始まると緊張は吹っ飛びました。お金を払ってきてくださっているお客様ひとりひとりのためにしっかりパフォーマンスするのが私の役目ですから。

――来日の少し前にはスコットランドでライヴをなさっていましたが、同地のオーディエンスとの反応の違いは?

JM: ヨーロッパのオーディエンスは、からだひとつ動かさずにじっくり聴き、音が消えたところでやっと拍手が起こるという感じです。でも東京のお客様は違いますね。バンドのメンバーがソロをとっているときでも、手拍子したり声援を送ってくれて、すごく反応の良い印象を受けました。


写真提供/COTTON CLUB
撮影/ Tsuneo Koga


―― 2017年リリースの前作『ア・ソーシャル・コール』に続いて、最新作『ラブ&リベレーション』もグラミー賞にノミネートされましたね。

JM: 2作連続でノミネートされたことを本当に嬉しく思います。『ア・ソーシャル・コール』はちょっと政治的な内容も含んでいて、それがどう受け止められるのかという懸念もありました。でもグラミー賞にノミネートされて、これもとてもありがたいことだったのですが、今回の『ラブ&リベレーション』がノミネートされたことは私にとって、より重要です。前作は他人の作った曲を私がアレンジしたものが主で、私の50%程度しか表現できていなかったのではないかと思うほどです。しかし新作は私の自作が主体です。メロディ、声、歌詞の中に描かれているストーリー、そのすべてが私の表現なのです。それを(グラミー賞ノミネートという、注目が集まる機会を得たことで)、より多くの皆様とシェアできることを光栄に感じます。

―― あなたの自作曲はメロディの流れが自然で、奇をてらうようなところが一切ありません。「アイ・ソート・アバウト・ユー」のようなスタンダード・ナンバーと並んでも、違和感がありません。

JM: スタンダード・ナンバーは大好きですが、あえてそのように書こうと考えたことはないですね。自分の中に浮かんでいるフィーリングを曲にしていくだけです。ただ、幼少の頃からゴスペル・ミュージックに囲まれて育ってきた影響は大きいと思います。“真実を歌い、それをひとに伝えていく”という姿勢も、ゴスペルから学びました。

―― 『いっぽうでエリカ・バドゥのカヴァー「グリーン・アイズ」も、見事にあなた自身の表現になっています。

JM: エリカ・バドゥは私にインスピレーションを与えてくれる存在です。母が大ファンだったので、私は子供の頃からエリカの歌を聴いていました。常に家でかかっていた印象があります。

―― でも、もちろん、エリカの楽曲ならどれでも取り上げる、というわけではありませんよね。

JM: 自分のストーリーとして表現できる歌詞であること、私にとってこれが他人の曲を歌う際に重要です。私自身の体験してきたことが、「グリーン・アイズ」の歌詞には登場しますからね。パフォーマンスのときに、自分の物語としても聴き手に伝えることができる。エリカと私は同じテキサス州ダラス出身でハイスクールも同じ。黒人の女性で詩人で母親で・・・。そうした存在が、この業界で活動していくのは本当に大変なことでもあるのですが。

―― 『ラブ&リベレーション』のオープニング・ナンバー「フリー・ユア・マインド」では、“自由は 子ども 女性 男性 すべての人の中にある”と歌われています。

JM: 『ラブ&リベレーション』は、前作『ア・ソーシャル・コール』を踏まえて生まれた作品です。前作ではゼノフォビア(外国人嫌悪)、レイシズム(人種主義)、不正に対する警告などを歌に込めました。今回のアルバムは、“では、それをポジティヴな行動に移してみようよ”という内容になっています。だから1曲目が「フリー・ユア・マインド」、自分のマインドを解き放とうということです。そして“もうちょっと自分自身を愛してみよう”と呼びかけています。昔の私は自分に劣等感を抱いていました。第一、ジャズメイア(※実際の発音はジャズミーアに近い)という名前が好きではありませんでした。あまりにも黒人的すぎるのです。

――  そうなのですか!


写真提供/COTTON CLUB
撮影/ Tsuneo Koga


JM: 黒人的な名前のひとは、なかなか仕事を得ることができないのです。肌の色も好きではありませんでした。今もアメリカのテレビでは、果たして何人の黒人を見ることができるのか。なるほどバスケットボールやフットボールの有名選手、俳優、音楽家が登場する機会はあるかもしれません、政治家も少しは映りますけれど、医者や弁護士が登場したことはあるでしょうか。今も黒人が出てこれる場所は限られているんです。私はじっと鏡を見ます。この目も鼻も頬も私だけのものです。決して他人にはない、私自身のものであり、私自身の個性である。どんなふうに見えようと私は私、与えられた容姿や才能に感謝しています。自分を愛することで、心が解放されたのです。自分自身がこういう体験をしたからこそ、『ラブ&リベレーション』が生まれました。愛のないところに決して解放や自由は生まれない、私はそう思っています。

――  次のアルバムの構想は?

JM: もちろんあります。レコーディングやリリースの時期はレーベル次第ですが、次はビッグ・バンド編成の作品を希望しています。私はこれまでスコットランドのスコティッシュ・ナショナル・ジャズ・オーケストラ、ドイツのWDRビッグバンド、リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラ等と共演してきましたが、ぜひ自分自身の楽曲を自分の率いるビッグ・バンドで表現してみたいですね。ビッグ・バンド用の曲作りやアレンジは、もう始めているんです。


■リリース情報
ジャズメイア・ホーン『ラヴ・アンド・リベレーション』
Jazzmeia Horn / Love and Liberation

2019年9月4日発売
品番:UCCO-1214
価格:\2.860(税込)

CDはこちら
https://store.universal-music.co.jp/product/ucco1214/

spotifyはこちら
https://open.spotify.com/album/4DbWKlb4SOElI7DYEE5TIR

Apple Musicはこちら
https://music.apple.com/jp/album/love-and-liberation/1468027605?app=music

【収録曲】
01. フリー・ユア・マインド Free Your Mind
02. タイム Time
03. アウト・ザ・ウィンドウ Out The Window
04. ノー・モア No More
05. ホエン・アイ・セイ When I Say
06. レッグス・アンド・アームズ Legs and Arms
07. サーチン Searchin’
08. グリーン・アイズ Green Eyes
09. スティル・トライン Still Tryin’
10. オンリー・ユー Only You
11. リフレクションズ・オブ・マイ・ハート Reflections Of My Heart
12. アイ・ソート・アバウト・ユー I Thought About You

■ジャズメイア・ホーン各種リンク
ユニバーサル ミュージック
https://www.universal-music.co.jp/jazzmeia-horn/
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