COLUMN/INTERVIEW

独占インタビュー:来日公演が大反響。ブルーノートからデビューした大型新人ジョエル・ロス。

インタビュー/テキスト:原田和典

ヴィブラフォンをジャズ界の最前線に押し出した男、ジョエル・ロス。11月6日に初リーダー・アルバム『キングメーカー』を国内リリースし、11日から13日にかけてはブルーノート東京で初来日公演を開催。独創的かつ圧倒的なプレイで大器ぶりを示した(11日は日本人ミュージシャンとのセッション「BLUE NOTE plays BLUE NOTE」、12日と13日は自身のユニット、グッド・ヴァイブスによる公演)。弱冠24歳、彼の眼下には限りなく明るい未来が拡がっている。



11/11 BLUE NOTE plays BLUE NOTE公演時
Photo by Takuo Sato



―― 2019年の今、これほどオリジナリティに富んだヴィブラフォン奏者に出会えるとは思っていませんでした。ジョエル・ロス・サウンドの秘密について教えていただけますか?

ジョエル:とくに「自分は独創的でなくてはならない」と考えてプレイしてきたわけではないし、感じるままに音楽に取り組んできただけだけど…。僕はもともとドラマーだったので、リズム楽器としてヴィブラフォンを捉えているところはあるね。ほかのヴィブラフォン奏者を批判するわけではないけれど、彼らは全体に音を長く伸ばし過ぎる傾向があるように思う。僕はそれぞれの音の長さをもっとコントロールして、ペダルの踏み方にも細心の注意を払って、より多彩なサウンドを出したいと思っている。コンピング(伴奏)に関しては、今のジャズ・ヴィブラフォン界はゲイリー・バートンの影響が大きくて、4本のマレットを用いたアプローチが当たり前なものとなっている。でも、僕はその手法を使わない。音数が多すぎて、スペース(空間)が足りないんじゃないかと思うから。僕を指導したステフォン・ハリスは、トライアド(三和音)を軸にしたコンピングを教えてくれた。こちらのほうがいろんなサウンドに応用しやすいし、より多彩な音楽にできると思う。

―― あなたはステフォン・ハリスの指導を受けるいっぽうで、ジャズ・ヴィブラフォン界のレジェンドであるボビー・ハッチャーソン(2016年死去)とも交流がありました。

ジョエル:ボビーにはもっと会って、いっぱい話をしておきたかった。彼が最も強く言っていたのは、「とにかく曲を書くように」ということ。毎日感じたこと、それを日記のように曲として綴るということだね。家族や友人のことを思ったり…。そうした楽曲を集めた一枚が、この『キングメーカー』なんだ。ジェレミー・ダットンのオリジナル曲「グレー」と、ベンジャミン・ティベリオの「インタールード(ベース・ソロ)」以外、すべて僕の自作で構成されている。


11/11 BLUE NOTE plays BLUE NOTE公演時
Photo by Takuo Sato



―― 『キングメーカー』はブルーノート・レーベルからのリリースです。ボビーやステフォンも数々の力作を発表している名門ブルーノートから作品を出すようになったきっかけを教えてください。

ジョエル:友人のピアニスト、ジェイムズ・フランシーズとモンタレー・ジャズ祭で演奏した時だった。彼が「今度、ブルーノート社長のドン・ウォズに会うよ」と言うんだ。そして彼はブルーノートと契約し、彼のアルバム『フライト』のレコーディングには僕も参加した。「ブルーノートのアルバムに参加できてよかったな」と思いながら演奏したことを覚えている。そうしたら社長のドン・ウォズが僕にも関心を示してくれた。「君も自分自身のアルバムを出してみないか? ハービー・ハンコックもファースト・ソロ・アルバムの時は20代前半だったんだから」って電話も来て、すごく励みになった。ブルーノートは本当に特別な、ジャズの歴史にとって最も重要なレーベルだ。その偉大なストーリーに名を連ねることができて誇りに思う。ブルーノートの名に恥じない音楽になっていることを望むよ。

―― 自分以外の作品で、とくに大好きなブルーノート盤は?

ジョエル:それは難しい質問だね(笑)。僕は60年代のマイルス・デイヴィス・クインテット(マイルス、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムス)がフェイヴァリットなんだ。でも聴き始めた頃は、その作品がどのレーベルから出ているかなんてことは別に気にしていなかった。そのうち「マイルス・クインテット以外のウェインやハービーも聴いてみたいな」と思って、ハービーの『処女航海』、『エンピリアン・アイルズ』、『スピーク・ライク・ア・チャイルド』、ウェインの『ナイト・ドリーマー』や『スピーク・ノー・イーヴル』といったブルーノートの音源に魅せられた。大好きなブルーノート盤について尋ねられたら、こうした作品を真っ先に思い浮かべるよ。

―― 『キングメーカー』の発売、そして今回の来日公演で、日本のオーディエンスのジョエルさんへの支持は一層広がると思います。

ジョエル:実は来月、新作を録音するんだ。『キングメーカー』のリリースは今年だけど、録音自体は2016年なので、個人的には少し懐かしいという気持ちもあるね。国内盤のボーナストラックになっている「タッチト・バイ・アン・エンジェル」は今年8月に行われたニューポート・ジャズ祭でのライヴ録音だから、アルバムの最初に入っている同じ曲と聴き比べてもらうと、その間の僕の変化を感じてもらえると思う。


Joel Ross – Yana (Music Video)

 
 
 

■リリース情報
ジョエル・ロス
『キングメーカー』

2019. 11. 6 ON SALE
SHM-CD: UCCQ-1108  \2,860 (tax in)
購入・試聴はこちら https://jazz.lnk.to/KingMakerNL

収録曲
1. タッチト・バイ・アン・エンジェル
2. プリンス・リンズ・ツイン
3. ザ・グランド・ストラグル・アゲインスト・フィアー
4. イル・リレーションズ
5. イズ・イット・ラヴ・ザット・インスパイアズ・ユー?
6. インタールード (ベース・ソロ)
7. キングメーカー
8. フリーダズ・ディスポジション
9. ウィズ・フーム・ドゥ・ユー・ラーン・トラスト?
10. グレー
11. ヤナ
12. イッツ・オールレディー・トゥ・レート
13. タッチト・バイ・アン・エンジェル (Live At Newport Jazz Festival) ※日本盤ボーナストラック

ジョエル・ロス(vib) イマニュエル・ウィルキンス(as) ジェレミー・コレン(p) オル・バレケット(b) ジェレミー・ダットン(ds) ゲスト:グレッチェン・パーラト(vo)


Link
ユニバーサルミュージック ジョエル・ロス サイト https://www.universal-music.co.jp/joel-ross/
ジョエル・ロス公式サイト(英語) http://www.iplayvibes.com/