COLUMN/INTERVIEW

ゆっくり、だけど、確実に。 〜福盛進也 音楽半生記〜 (第19回)



2019年に創立50周年を迎えたドイツの名門ECMレーベル。そのECMから昨年デビューを飾った日本人ドラマーの福盛進也。
15歳でドラムを始め、17歳の時に単身で渡米。その後、ブルックヘブン・カレッジ、テキサス大学アーリントン校を経て、バークリー音楽大学を卒業。10年間のアメリカでの活動後、2013年に拠点をミュンヘンに移し欧州各国で研鑽を積み、遂に念願のECMデビューを飾った福盛進也が、これまでの歩みを自ら綴る連載企画。


【第十九章】―広がる世界―

ブルックヘブン・カレッジでの授業が始まり、晴れて大学生としての生活を楽しんでいた。Artsで少しは学んでいたものの、初めて専門的に音楽の授業を受けることができ、毎日学校へ通うことがとても嬉しかった。

音楽理論の授業ではクラシックの解釈を基に分析し、今まで知らなかった世界が大きく広がった。音の重なり方や対位法。クラシックでよく使われるハーモニーの進行など、どれも新鮮でずっと聴いてきたベートーヴェンを始めとする音楽が少し近くに感じられた。

そしてイヤー・トレーニング。その名の通り、耳を鍛えるコース。元々(ほぼ)絶対音感がある僕は、単音やメロディを正確に聞き取ることができたので苦労はしなかったが、コード的なハーモニーになると僕は得意ではなかった。結局それは現在でも続いていて、ハーモニーというものをあまり把握できていない気がする。というのも、音の響きは前後によって大きく変化するものだと思っていて、個人的にはそのコードの決められた役割よりも、状況により変化する空気感のほうに興味があるからなのだと思う。

ある日、イヤー・トレーニングの先生が「バイオリニストやサックス奏者はメロディを拾うのが得意で、ピアニストやギタリストなんかはコードを聞き取るのが上手な傾向がある」と言っていた。それを聞いて、音楽をやる上で様々な楽器に触れることは大切だなと感じ、バイオリン、ピアノ、ギターと色々と手を付けてきたことにも意味があったのだな、とこれまでの自分の音楽歴を振り返った。

その二つに加え、必修のピアノ、ドラム・レッスン、アンサンブルなど、まさに音楽科といった授業ばかりが毎日行われていた。ジャズ・ドラムのことをまだ何も知らない僕は、ここで一から教わった。基礎的なリズムやルディメンツ、初見の演奏方法、そしてジャズでよく使われるグルーヴなど、ドラムの世界は奥深いものなのだと感じた。またそれだけでなく、どんなスティックを使えば良いかなど初歩的なアドバイスもたくさんくれた。その全てを教えてくれたのがKeith Umbachという素晴らしい先生だった。小さい学校ということもあり、彼とはしょっちゅう顔を合わし、次第に師弟関係というよりお互い親子に近い存在になっていった。Keithはいつも僕の体調や精神状態も心配してくれ、同時に若くて生意気な自分を叱ってくれたり、本当に心から信頼できる人だった。音楽的なことだけでなく、人生の相談にも乗ってくれたりする時もあったり。僕の成長を誰よりも喜んでくれ、その為には時間を惜しまない素晴らしい先生、彼に巡り合えたことは宝物だし、いつまでも僕は感謝している。


Keith Umbach

Keithだけでなく、ピアノを教えていたOctavioというメキシコ出身の先生にも大変お世話になった。教授ということもあり、学校内の音楽イベントを仕切ることが多く、僕はボランティアで彼をよく手伝っていた。そうしているうちに仲良くなり、プライベートでも一緒にご飯に行ったりお酒を飲みに行ったり、たくさんの時間を共有した。彼もKeithと同様に僕のことをいつも気にかけてくれ、何か悩み事があったら相談したりしていた。その関係はアメリカにいる間ずっと続き、自分の居場所が変わっても会いに行ったりもした。


Octavioとパーティーで

先生陣も素晴らしい人たちばっかりだったが、周りの生徒にも随分と恵まれた。アメリカの大学では日本とは違い、様々な人種や年齢層の人が学びに来ていることが多い。学びたい人に対しては間口が広い国なのだ。ブルックヘブンももちろんそうで、同じドラム、パーカッションを学ぶ生徒にはAndieという40歳過ぎの女性がいた。昔は映画業界で働いていた異色の経歴の持ち主なのだが、そんな人でも新しく何かを学べることはアメリカでは普通だった。彼女も僕にとって大切な存在で、なにかとよく面倒を見てくれた。特にOctavioと僕らは仲が良く、三人で何かすることが多かった。Andieも僕と同じ時期に入学したので、彼女とはいつも譜面の読み方や演奏方法などを考えたり、同じKeith門下生として一緒に切磋琢磨し日々共に過ごした。

その他にもここには書き切れないほどの想い出を一緒に作れた人がたくさんおり、ブルックヘブンを選んで良かったなと心から思った。そして、こういった素晴らしい大人たちに囲まれながら、僕は昔の自分から立ち直ることができ、大きく大きく成長させてもらった。僕の親も僕自身もよく口にすることだが、本当にテキサスにはたくさん育ててもらった。

テキサスを離れてもう10年以上も経つ。またいつか再びテキサスを訪れ、現在の成長した僕の姿をみんなに見てほしいと願う。そしてまた昔のように一緒にお酒でも飲みに行けたらいいな。


※記事中の写真は本人提供

(次回更新は11月18日の予定です)



第十八章はこちら
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■最新情報
伊藤ゴロー、佐藤浩一との新ユニット
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