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昭和とECM

1969年、ドイツでマンフレート・アイヒャーによって設立されたレーベル、ECM Records(Edition Of Contemporary Music)。
ジャズからクラシック、現代音楽までを網羅したラインナップで、これまでに1,500タイトル以上リリースされており、その“沈黙の次に美しい音”と言われる透明感にみちたサウンドは、誕生から半世紀近くにわたって音楽ファンを魅了しつづけています。
そんなECMレーベルが誕生して今年は50周年!
今回は設立50年迎えたECMレーベルの昭和時代に焦点を当て、ECMと昭和と題し、ポリドール時代のECMを担当されていた五野洋さんに執筆頂きました。





昭和44年、マンフレート・アイヒャーはミュンヘンでECMレーベルを設立、翌年記念すべき第1回新譜としてマル・ウォルドロンの『フリー・アット・ラスト』をリリースする。レコード番号はECM1001。ECMが創立50周年を迎え、世界的なレーベルに成長した今、このレコード番号はただの数字以上に輝いている。全てが1001から始まったのだ。

Mal Waldron 『Free at Last』 (1969年:昭和44年録音)


https://www.universal-music.co.jp/p/uccu-5732/


その頃アメリカでは、マイルス・デイヴィスが『ビッチェズ・ブリュー』をリリース。日本では、渡辺貞夫、日野皓正がジャズ・シーンを盛り上げる一方、富樫雅彦、山下洋輔を中心としたフリー・ジャズ・シーンも活況を見せていた。

まだ生まれたばかりの新興レーベルECMは日本の販売網開拓をハラ・ミュージックという代理店に依頼、アルバム毎に単発で契約されることになる。上記マル・ウォルドロンの『フリー・アット・ラスト』とキース・ジャレットの『フェイシング・ユー』はビクター音楽産業(現ビクターエンタテインメント)。ヤン・ガルバレクの『アフリック・ペッパーバード』とチック・コリアの『A.R.C.』は日本グラモフォン(現ユニバーサル ミュージック)。サークルの『パリ・コンサート』はCBSソニー(現ソニーミュージック)という具合だ。


Keith Jarrett 『Facing You』 (1971年:昭和46年録音)
https://open.spotify.com/album/2IJMiFlEXfzFqGgotYpB5p?si=lPbUn33CSWivf1A8U8DHRg

https://store.universal-music.co.jp/product/uccu5705/


Jan Garbarek Quartet 『Afric Pepperbird』 (1970年:昭和45年録音)
https://open.spotify.com/album/4WljiGS6WWAKYh2qYsZb7F?si=uYDldPsLQKeAlBRHJ3bthA


Chick Corea, Dave Holland, Barry Altschul 『A.R.C.』 (1971年:昭和46年録音)
https://open.spotify.com/album/3As0pVP3oF3RMEp9FILqQj?si=UuWZS15lQdykBKgDRPfswg

https://store.universal-music.co.jp/product/uccu5724/


Circle 『Paris Concert』 (1971年:昭和46年録音)
https://open.spotify.com/album/7ETtMBL93DdOuZym37xFl6?si=EjnVEvMSTPOuTIs4reueoA


レーベルもビクターがGlobeレーベル、グラモフォンがPolydorレーベルを使い、まだECMレーベルでのリリースではなかった。チックの『A.R.C.』に至っては何とジャケットまで変えられていた。あのアイヒャーがよくOKしたものだと思う。

昭和46年、日本グラモフォンはチックの『ピアノ・インプロヴィゼージョンズVol. 1』『同Vol. 2』『リターン・トゥ・フォーエヴァー』の発売権も獲得したが、『リターン・トゥ・フォーエヴァー』は各社の激しい争奪戦が繰り広げられ、当時来日していたチックのホテルでの直談判まであったそうだ。一連のチック作品は大ヒット。昭和48年には『リターン・トゥ・フォーエヴァー』のレコーディング・メンバーによる来日公演、『リターン・トゥ・フォーエヴァー』『ピアノ・インプロヴィゼージョンズVol. 1』がスイングジャーナル・ジャズディスク大賞の金賞、銀賞受賞という快挙もあり、ジャズ界を超えたチック・コリア・ブームがピークを迎えた。



Chick Corea 『Piano Improvisations Vol.1』(1971年:昭和46年録音)
https://open.spotify.com/album/3oJIXfNVUhDEO2trhEqK9K?si=OepbqHLqRBmfoCrpckHMiw
https://store.universal-music.co.jp/product/uccu5725/


Chick Corea 『Piano Improvisations Vol.2』(1971年:昭和46年録音)
https://open.spotify.com/album/6CrTJJMAufWRZt5gVJ2IIK?si=wzBI1h3oTtGoGEiixm1v0A

https://store.universal-music.co.jp/product/uccu5726/



Chick Corea 『Return To Forever』 (1972年:昭和47年録音)


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昭和48年トリオ・レコードがついにECMとレーベル契約、日本初のECMレーベル国内プレス盤発売をスタートさせたが、単発契約で各社に分散していた上記アルバムはそのままに各社に残った。義理堅いマンフレート・アイヒャーがハラ・ミュージックと各社の最初の契約を尊重したためである。

トリオ・レコードはECMレーベルを積極的にマーケティング、女性を中心に新しいファン層を掘り起こすことに成功する。クラシックは好きだが、ジャズはよくわからないというOL層(それ以前はBGと言われたが昭和38年NHKが放送禁止用語に指定)に『クリスタル・サイレンス』、キース・ジャレットの『ケルン・コンサート』などのアルバムが支持される。ジャケットのイメージも大いに貢献し、従来のジャズとは違うオシャレな音楽として団塊世代の女性を中心に受け入れられたと思う。

Keith Jarrett 『The Köln Concert』 (1975年:昭和50年録音)


昭和36年のアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの初来日を契機にファンキー・ジャズの一大ブームが訪れ、ジャズ喫茶や、VAN JACKET, MEN'S CLUBが仕掛けたアイビー・ブームと共に主に団塊世代中心のカルチャーとして定着したモダン・ジャズ。地方から上京した貧乏学生は風呂なし、トイレ共同、電話呼び出しの3拍子揃った安アパートで暮らし、ステレオなど高根の花だったため、ジャズ喫茶に通い詰めた。一杯のコーヒーで何時間もねばり、新着アルバムをむさぼるように聴いたものだ。しかし、そのメイン層はあくまでも男性中心、雑誌で言うと「平凡パンチ」の読者層。そこに登場したECMは誤解を恐れずに言うと「anan」読者層に受け入れられたのではなかろうか。

昭和47年、キース・ジャレットの初ソロ・ピアノ・アルバム『フェイシング・ユー』がビクター音楽産業から発売され、キースと日本との長く、特別な関係が始まる。
昭和49年1月、キース・ジャレットは自己のクァルテットを率いて初来日し全9公演を行なう。デューイ・レッドマン(sax)、チャーリー・ヘイデン(b)、ポール・モチアン(ds)の通称アメリカン・クァルテットだ。この時の追加公演が急遽ソロ公演となり、キースの初ソロ・コンサート(1月15日芝の郵便貯金会館)が実現した。

キース・ジャレットは、昭和51年11月5日〜18日京都、福岡、大阪、東京、名古屋、横浜、札幌と全国8ヶ所の初のソロ・コンサート・ツアーを敢行、そのライヴを前代未聞のLP10枚組アルバム『サンベア・コンサート』として発売し、全世界を驚かせる。
しかし、昭和58年トリオ・レコード解散により、ECMレーベル全タイトルの国内発売権はポリドール(現ユニバーサル ミュージック)に移ることになり、現在に至る。(*1)



Keith Jarrett 『Sun Bear Concerts』 (1976年:昭和51年録音)

https://open.spotify.com/album/4VELwCVLKeaG80pHsIOpr0?si=FTPu-CwyRziuULbx8F9QlA​​​​​
https://store.universal-music.co.jp/product/ucce9336/


昭和49年1月の初来日から平成26年5月9日東京、紀尾井ホールのソロ・コンサートまでキース・ジャレットの日本公演186本全てをプロデュースして来た鯉沼利成さんが平成30年2月に他界された後、キースは日本の地を踏んでいない。

(*1)
結局、昭和最後の年、昭和63年末にリリースされたラルフ・タウナー『シティ・オブ・アイズ』(ECM1388)まで18年間でECMは合計388タイトルのアルバムを世に出したことになる。たった一人のプロデューサーが年間22タイトルを制作したのは驚異的である。

Ralph Towner 『City Of Eyes』 (1988年 昭和63年録音)
https://open.spotify.com/album/6N3PrZwT4jOCBQuG7uiYtN?si=M-HyU8KMT7KpICzHRiE


2019.8.8 五野洋

参考文献:稲岡邦彌著「ECMの真実」(河出書房新社より平成13年発行)


▼ e-onkyoにて祝ECM50周年 「昭和の名盤30」プライスオフ実施中!(8/31まで) https://www.e-onkyo.com/feature/4094/
▼ moraにて祝ECM50周年 「昭和の名盤30」プライスオフ実施中!(8/31まで)https://mora.jp/topics/otoku/ecm_50th_priceoff/?fmid=EDUMAINV01


■祝ECM50周年~昭和/平成の名盤25
50年間の間にリリースされてきた1,500以上もの作品の中から厳選された名盤50作品UHQ-CDでリリース。
シリーズ合計50作品限定発売
7/24 第一回発売 昭和の名盤25作品(UCCE-9330~9355)
8/21 第二回発売 平成の名盤25作品(UCCE-9356~9380)

記念サイト
https://www.universal-music.co.jp/jazz/ecm50th/


■ECM各種プレイリスト
・ECM Records 1001-1999
SPOTIFY
https://open.spotify.com/playlist/54hZLPMDWjHVpCi9eJtUPB?si=wrWx-nmgT9uUxFpy5Ipjgw

・ECM
SPOTIFY
https://open.spotify.com/playlist/0vWR0UDQrVFtTo03TN3F0L?si=TB-VYhkjQNGiSfCqHGkNWQ

apple music
https://music.apple.com/jp/playlist/ecm/pl.5a9326f0f5da47059b21850add4d145b

・ECM New & Forthcoming
SPOTIFY
https://open.spotify.com/playlist/1zN4nK6oHMo2dei2WWPtSL?si=MRnKEVuURRyOMYhO2L85tA

apple music
https://music.apple.com/jp/playlist/ecm-%E6%9C%80%E6%96%B0%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9/pl.4913226b0267475ba31a460b5c6ca958